デザインとは何かオリンパス光学工業 OLYMPUS XA デザインという言葉デザインを学ぶための学科が普通の大学ではなく、美術系の大学に多く設置されているせいなのかもしれませんが、私達はデザインという言葉から、「きれいな形や意匠」などに関連する内容を想像してしまいがちです。しかし、その語源が「計画する」という意味のラテン語「designare」であることを考えると、デザインを造形だけに関連させた狭い意味で捕らえるのではなく、「全体を統合して計画、設計する」行為であるとするのが正しいでしょう。
製品開発の現場では、いわゆる「デザイナ」が「きれいな形や意匠」などの造形という立場から製品設計に関わっていますが、ここで行われているのは狭い意味での「意匠デザイン」や「工業デザイン」です。一方、「設計者」は意匠も含めた外観や機能、構造などの矛盾を解決しながら製品全体をまとめてゆく立場にあるにも関わらず、「きれいな形や意匠」には意外と無関心なところがあります。 周囲にある製品には何らかのデザインが施されているはずなのに、造形と機能がバランスよく設計された製品が少ないのは、「全体を統合して計画、設計する」という本来のデザイン思考が足りないのかもしれません。 良いDesignタイトルの写真は、私が社会人になって2年目(1979年11月25日)に購入したコンパクトカメラ「OLYMPUS XA」です。ケース表面の塗装も剥がれ、ひび割れている部分もあるのですが、仕事で成形立会い時の様子を記録するなど、20年近く現役で活躍してくれました。発売当時も話題になったレンズカバー部の造形と機能がうまく「Design デザイン」され、今でもそんなに古臭い感じがしないのには驚きです。 しかし、この商品以降にオリンパス光学工業から発売されたコンパクトカメラで、この「Design デザイン」を越えるようなものを見かけないのは残念なところです。それは多分、「きれいな形や意匠」などの造形だけを「デザイン」だと思い込んだ「意匠デザイナ」ばかりが増え、製品全体を統合できるような「Designer デザイナ」が少なくなってしまったからではないか、と私は想像しています。 私は「きれいな形や意匠」の造形だけに関わる人達を「デザイナ」と呼ぶことには抵抗があります。正確には「意匠デザイナ」や「グラフィックデザイナ」と呼んで、区別すべきものでしょう。そして、機械設計者や企画担当者であっても、あらゆる物事を総合的に考えて全体を設計できる人だけを「Designer デザイナ」と呼びたいものです。 製品開発においては、このような全体を統合できる「Designer デザイナ」が重要になります。リーダとしての「Designer デザイナ」の資質がしっかりしているチームや製品は、すばらしい結果を出せるでしょう。そういう意味で、デザイン科は美術系の大学よりも、総合大学や工業大学にもっとたくさん設置されるべきだと思っています。 |