Update - 03 May, 2020(Original - 11 Nov, 1999  HomeHome

モデリングツールと設計ツール

 3次元CADは単なるモデリングツールとしてだけでなく、設計ツールとして活用する事が重要です。

3次元データを2次元CADで活用

 象印マホービンでは、デザイン部門は3次元CAD、設計部門は2次元CADという混在環境を構築し、効果を上げているそうですが、3次元CADを単なるモデリングツールとしてだけではなく、設計ツールとして活用する事が重要ではないでしょうか。

 以下は、「日経デジタル・エンジニアリング 1998年03月号 フィールドケース」 より引用しました。

象印マホービン
3次元データを2次元CADで活用
ラフなデザインが固まってからモデリング

 象印マホービンでは、デザイン部門は3次元CAD、設計部門は2次元CADという混在環境を構築し、効果を上げている。以前、設計部門に3次元CADを導入しようとして失敗した経験から、モデリングの労力を差し引いても大きな効果が期待できるデザイン部門に3次元CADを導入した。

 同社で特徴的な点は、デザイン部門で作成した3次元の外観形状データを、設計部門で2次元の断面形状データに加工し2次元CADに取り込んでいること。3次元CADから2次元CADへのデータの流れを作り出し、デザイン部門だけでなく設計部門でも3次元化の効果を享受している。


 3次元CADを使えば、様々な利点があることは分かっている。しかし、その利点を享受するのに多大な労力が必要となると話は別。従来の方法で十分対応できるのなら、現場のユーザーは3次元CADを与えられても、苦労してまで使おうとはしない。 3次元CADの導入に失敗する一つの原因は、どうしてもそれを使いたいという必然性が現場にないことだ。

7年前に3次元CAD導入に失敗

 象印マホービンが、3次元CADの導入を最初に試みたのは今から7年前のこと。当時は、先進的な企業が3次元CADを導入し注目されていた時期だった。情報システム部門が3次元CADを選定し、炊飯ジャーや電気ポットの設計部門に導入した。

 情報システム部門の計画では、設計者が3次元CADを使い、外観形状をモデリングし、外観形状を立体的に把握しながら内部の部品を設計するはずだった。 しかし、「実際には炊飯ジャー内部のカマに目盛を付ける際の体積計算ぐらいにしか使われなかった」(商品開発センター情報システム担当主任研究員の西林一弥氏)。1千万円以上した3次元CADは補助的なツールにとどまった。

 失敗の原因は、3次元CADの魅力を実体験するまでのハードルが余りにも高過ぎたことにある。第1に、導入した3次元CADのコマンドが覚えにくかったこと。コマンドの体系が設計者の感覚とずれており、一つのコマンドを覚えるのに3時間ぐらいかかった。 同社ではこの3次元CADのことを‘3時間CAD’と呼んでいたという逸話も残っている。おまけに、炊飯ジャーや電気ポットは、1〜2年のサイクルでフルモデルチェンジする。 開発に追われている設計者にとって、腰を落ち着けて3次元CADを覚える余裕はなかった。

 この記事を読んで、私はなんだか違和感を覚えました。

モデリングツール

 これから3次元設計を始めようとしている人に、よくこんな質問をされます。

 「3次元設計って、難しいんでしょうね」

 確かに難しいですね。でも、何がそう思わせるのでしょうか。

 2次元設計の場合は、平面図ですから、紙と鉛筆があれば形は表現できます。子供の頃、誰でも落書きなどをしましたよね。それと一緒で、とにかく、線が描ければ大丈夫の世界です。2次元CADを使うようになっても、紙がディスプレイに替わったただけで、基本的には同ではずです。

 3次元CADの場合は、モデリングが必要です。次元がひとつ増えただけで、断面を描いて押し出したり、スイープさせたりという手間が増えてしまいます。人によっては、この辺のところが面倒くさく、負担に感じるようです。特に、2次元では表現できないような複雑な形状は3次元でも大変なことは確かで、このようなモデリングの難しさが、3次元設計は難しいと感じさせます。

 2次元CADと3次元CADの併用などは、口当たりはいいけど、結局は無駄なことをしてるのではないかなと思うのですが。製図をモデリングに置き換えて満足な人には受けるでしょうけどね。設計者のなかにもこのような人がいますから、なかなか3次元CADが普及しないんでしょうか。

設計ツール

 3次元CADをモデリングツールと設計ツールに分類している訳ではありませんが、本来、設計ツールとして使ってこそ効率的なものなのに、単に形状をつくる(モデリング)ためだけに使われている場面が多いのではないでしょうか。

 乱暴ないいかたをすれば、2次元の製図・トレースに相当するのが3次元のモデリングで、2次元の組み立て図に相当するのが3次元のアセンブリ設計だと思います。

 たとえば鉛筆をモデリングするだけなら、6角柱を作成して先端を削っておけばよいでしょう。しかし、鉛筆を設計するなら、最初から6角柱などモデリングしません。なぜなら、設計当初はそれが6角になるのか8角になるのかはわからないはずですから。だから、とりあえず円柱をモデリングします。それから実際の仕様が決定するにしたがって、6角ならば、最初に作った円柱を削って6角に...という手順になるでしょう。

 最初から、最終形状が明確でその形状をとにかくモデリングすればいいというのがモデリングツールとして使っているとゆう意味です。だから、3次元CADを評価するときに、どんな形状でも出来なければ許さないと言う目でみてしまいます。

 設計では、必ずしも最終形状が決まっている訳ではありません。いろんな要因によってモデリング途中でもやり直しや変更が発生します。ただ形が出来るだけの3次元CADでは使い物にならないのです。だから、3次元CADを評価するときはアセンブリ設計はもちろん、変更のしやすさ、モデリング手順が設計手順に馴染むか...などを優先します。

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