Update - 29 Sep 2024 User PageWeb Links

09■200801 ノンヒストリー型 vs ヒストリー型

 3DCADのモデリングスタイルには、フィーチャ(形状要素)履歴を持持たない「ノンヒストリー型」と、履歴を持つ「ノンヒストリー型」がある。それぞれに特徴を持っているが、重要なのは道具を使いこなす設計スキルである。

目次
    ◆ノンヒストリー型を使う
    ◆ヒストリー型を使う
    ◆設計スキルを身に付ける

◆ノンヒストリー型を使う

 このタイプの3DCADはフィーチャの履歴や親子関係に制約されず、作りたい形状を自由に定義していくモデリングスタイルだ。ヒストリー型に見られるフィーチャの履歴や親子関係などの操作を避け、2DCADの延長線上でも操作できるようになっている。

 ノンヒストリー型の3DCADは、良くも悪くも履歴の無いことが特徴である。モデルデータは最終形状しか保持しないため、変更箇所を切り貼りするように形状を削除したり追加したりして、大胆な変更も可能だ。そして、手間をいとわなければ、どのような形状にも作り変える事ができる。

 簡単な配管固定用のブラケットを例にして、モデリング手順をトレースしてみよう。

配管固定用ブラケット(ピンク色の部品)
 形状を定義する手順を厳密に考えなくてもよいので、気が楽だ。2DCADと同じ要領で、適当な作業平面に立体化する断面を作図する。
断面形状のスケッチ

 作図した断面を必要だけ押し出せば、立体形状の出来上がりだ。

押し出し

 ねじ固定用の長孔や取付部の角Rなどの細かな形状も同様に作成すればよい。

ブラケットの完成

◆ヒストリー型を使う

 このタイプの3DCADは、フィーチャの履歴や親子関係を意識し、作りたい形状のパラメータや拘束条件を定義していくモデリングスタイルだ。ノンヒストリー型とは異なり、完成形状ではなく完成形状に至る過程をフィーチャに対応させながら、論理的に形状を構築していくような操作となる。

 ヒストリー型の3DCADは、フィーチャの履歴や親子関係をコントロールできるか否かで、使い勝手の評価が極端に異なる。モデルデータにフィーチャの作成履歴を含むため、形状を変更する場合は関係するフィーチャの再定義やパラメータの修正を伴うからだ。設計プロセスを理解していれば、結果的に変更しやすいモデルを作ることは容易だが、そうでない場合は変更や流用が困難なモデルとなってしまう。

 ノンヒストリー型のモデリング例で用いたのと同じ配管固定用のブラケットをヒストリー型の3DCADで、設計プロセスを考慮すながらモデリングしてみよう。

 まずは、モデリングする部品の設計基準を明確にしておこう。取り付け面と配管の荷重を受けている中心とする。

ブラケットの設計基準

 設計基準を決めたら、ブラケットの最大外形(厳密でなくてもよい)を直方体で表現してみる。

ブラケットの最大外形

 配管を固定するという設計機能を実現するために、配管に干渉する部分をカットする。

配管を固定する機能

 切削加工するならこのままで良いし、板金のプレス加工であれば、余分な形状をシェルコマンドで削除する。

板金部品にする

 ねじで固定するための長孔も作成しておこう。

ねじ固定用の長孔

 板金の曲げ部分にはプレス加工、及び応力緩和に必要な角Rを追加しておく。実際には履歴を操作して、シェルコマンドの前に挿入する。

曲げ部に角Rを追加

 最後に、取り付け部外形の角Rを作成して、完成となる。

取り付け部の角R

◆設計スキルを身に付ける

 二つのモデリング操作を比較してみると、ノンヒストリー型のほうが簡単に見える。ヒストリー型は、フィーチャを設計機能ごとに作成しているため、どうしても煩雑な印象を与えてしまう。

 ヒストリー型でも、ノンヒストリー型と同じような手順でモデリングできなくもないが、設計変更のことを考えれば、フィーチャと設計機能を一対一に対応させていくのが、本来の使い方だ。

 わかりやすいように、設計の順番とフィーチャの順番(モデルツリー)をチャートに表現してみよう。

ヒストリー型のフィーチャ履歴

 設計の順番とモデル作成の順番が対応しているのを確認出来る。モデル作成の順番はフィーチャ履歴の挿入や順序変更で入れ替わることはあるが、設計で考えていく順番はどんな場合でも同じであることに注意してほしい。

 ノンヒストリー型では、設計の順番とモデル作成の順番が曖昧で、モデリングだけを見れば、何の制約もなさそうである。

ノンヒストリー型のモデリング

 しかし、これは設計者の思考プロセスも曖昧であるということではなく、頭の中ではヒストリー型のCADでフィーチャ履歴を考えていくのと同じ手順を思考しているはずなのだ。下図のアイデアスケッチを見れば、そのことが良くわかるだろう。

アイデアスケッチ

 ノンヒストリー型であれ、ヒストリー型であれ、ツールによって設計の思考プロセスが変わるわけではない。ノンヒストリー型では設計結果しか残せないが、ヒストリー型では設計途中の思考プロセスも残していけるということだ。

 自分なりの設計プロセスを明確に持っている設計者であれば、どちらのタイプでも使いこなせると思うが、ヒストリー型の3次元CADを使ったほうがより効率的であろう。最終形状だけを重視されるような業務には、ノンヒストリー型のCADが向いていると思う。

 逆に、自分自身の中で設計プロセスが不明確な設計者は、ノンヒストリー型であろうが、ヒストリー型であろうが、使いこなすのは難しいだろう。


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