Update - 13 April, 2020  Know-howKnow-how HomeHome

Creo(Pro/ENGINEER)
Know-how and FAQs

Fundamentals

Creo(Pro/ENGINEER)について

 私が本格的に3次元CADを使い始めたのは1995年、当時勤務していた三洋電機株式会社で電話機器の設計部門に異動してからなので、そんなに古くから、、、というわけでもありません。

 それ以前に在籍していたラジカセの設計部門で、内装の構造部品と自由曲面を持つ外装キャビネットの干渉をチェックするために「5mmピッチで多数の2次元断面を作図する」といった気の遠くなりそうな作業を強いられた経験から、最初に試してみたのはラジカセ同様、自由曲面で構成された電話機の外装キャビネットをモデリングすることです。

 サーフェス系の3次元CADを使ったのですが、延々と続く2次元断面の作図作業からは開放されたものの、形状の作成や修正に新たな手間が必要となったこともあり、あくまでも2次元CADを補完する「モデリングツール」という位置付けでしかありませんでした。

 その後、2次元CADを使った設計に限界を感じていたこともあって、「設計ツール」として使える3次元CADの選定に関わることになりました。設計作業は試行錯誤の繰り返しが多く、形状作成や修正に手間のかかるサーフェス系や履歴をコントロールできないノンヒストリー系の3次元CADでは使い物にならないことは明白ですね。

 そこで、実際にコードレス電話機の設計に使ってみようと選定したのが、フイーチャベースでパラメトリック修正機能を持つソリッド系の3次元CAD(Pro/ENGINEER)です。フィーチャと呼ばれる単純な形状要素の組み合わせで複稚な形状を作成していく方法や、寸法バラメータを修正して形状を変更する方法は試行錯誤も簡単で設計感覚にもぴったりで、これならば「設計ツール」として使えると実感できたから、というのが理由です。

 読者の皆さんも3次元CADに関わったきっかけは様々であると思いますが、どうせ使うのであれば単なる「モデリングツール」としてではなく、「設計ツール」として活用してほしいものです。

特徴と設計上の注意点

 PTCのデモやカタログではPro/ENGINEERの特徴ばかり強調されますが、それはそれとして、実際の設計に使用する場面ではちょっと注意しなければならない項目もあります。ここでは、Pro/ENGINEERを設計ツールとして実務に使用する立場から、その特徴と設計上の注意点についてまとめてみました。

 これらはPro/ENGINEERの欠点だと攻撃されることもあります。また、機械設計には適しているが、自由曲面にはちょっとね、とかいう意見もあります。幾何学形状のモデリング(設計じゃないですよ)だけで十分だと言う人にとって、Pro/ENGINEER はオーバースペックかもしれませんし、自由曲面のモデリングが必要な人には Pro/ENGINEER のサーフェース機能が物足りなく感じるかもしれません。

 しかし、ほんとうに3次元CADを活用した設計(モデリングじゃないですよ)をしたいと考えている人にとっては、そのツールが自分の設計能力を増幅(amplitude)してくれるかどうかが重要だと思うのです。そのような意味で、Pro/ENGINEER は設計者の能力を増幅してくれる、すばらしいツールではないでしょうか。

  • Parametric(パラメトリック修正)
    特徴
     寸法駆動(ディメンションドリブン)により、寸法を修正して形状を簡単に変更できるので、デザイン変更や設計変更があっても簡単に対応できる。
    注意
     フィーチャー間に親子関係ができるため、意図した通りのパラメトリック変形を行なうためには、初めから変更する部分を意識したモデリングが必要である。当然のことながら、ベースフィーチャー(最初の親)を除去することができないので、モデリングや設計の先を見通すことが重要となる。
  • Feature-based modering(フィーチャー・ベース・モデリング)
    特徴
     モデリングはフィーチャと呼ばれる単純な形状特徴をベースにして、複雑な形状を作成していく。基本的なフィーチャとして「突起」「カット」「シェル」が、その他「サーフェス」「角R」「面取り」「ドラフト」などが提供されています。複雑なぼかし面を多用した曲面形状も、ソリッドフィーチャーとサーフェスフィーチャーを組み合わせてモデリングすれば不可能な形状はありません。
    注意
     フィーチャー間に親子関係ができるため、操作に慣れない間はエラーの回避やトリムメニューの修復に時間がかかってしまう。このフィーチャーはシステムで定義された通り正確に利用しなくてはならないので、モデリングにコツが必要である。
  • Fully associative and Single integrated database(フル・アソシエティビティと単一データベース)
    特徴
     データは「部品」「製図」「アセンブリ」の各モード間で一元的に管理されていますので、双方向に連携性があり、部品の形状を変更すれば製図やアセンブリにも変更が反映されます。
    注意
     双方向の連携で、一ヶ所の変更をリアルタイムで他の全ての工程に反映させるためには、それなりのマシンパワーが必要である。また、データが一元管理されているので、不用意に部品を削除すると、関連した製図やアセンブリが成立しなくなる。
  • Rerations(リレーショナル機能)
    特徴
     「部品」「製図」「アセンブリ」はもちろん、スケッチャーの中でも寸法間にリレーション(関係式)を設定し、寸法を拘束することができる。
    注意
     不用意にリレーションを設定しすぎると、寸法変更した時に意図しない形状になってしまうことがあります。
  • Assembly(アセンブリ機能)
    特徴
     独立したアセンブリモードがある。部品の組み付けは「合致」「整列」「挿入」によって行なう。
    注意
     アセンブルした構成部品同士にも親子関係ができるので、フィーチャーの親子関係と同様にコツが必要である。アセンブリモードで可能な集合演算は「カット」と「マージ」に限定される。
  • Miscellaneous(その他)
    特徴
     他の3次元CADに比べて動作が軽く、マルチプラットフォーム(UNIX、Windows XP/2000/NT/98)となっている。
     設計者が自分の設計意図、設計知識をデータベース化するツールとして Pro/ENGINEER を使いこなせれば、商品開発工程を大幅に合理化できるだろう。
    注意
     パラメトリック、フィーチャー・ベース・モデリングによる設計は設計手法の大きな変革であり、設計開始までに十分なトレーニングと実習期間を設けて、設計者の頭の切り替えと効率的な設計手法を習得する必要がある。今まで以上に下流(次工程)を意識した仕事の進め方をしなければならない。例えば、図面レス(3次元データ)で金型発注するためには金型構造を理解したモデリングが必要であるし、意匠デザインについても設計意図を意識してモデリングするというようなことである。
     製図機能は従来の2次元CADと同様の図面もできるが、基本的に検査用図面を作るためのものであるという割り切りが必要である。図面を描くといっても、寸法の作成とレイアウトの編集作業だけにとどめるのが良いと思う。
     作業は全てメモリ上で行われるため、アセンブリを実用的にハンドリングするためには大量のメモリーを搭載するのが望ましい。とにかく、その時点で搭載可能なだけ増設しておくのが良いでしょう。メモリの搭載量に関係なく、モデルが大きくなる(フィーチャー数が増える)と、指数関数的に再生速度が遅くなりますから、大きなモデルが必要な時は工夫が必要です。
     干渉チェックの機能が限定されており、ユーザーが手動でチェックする必要があります。チエックの結果は、二つの異なるパーツの干渉線が表示されるだけであり、干渉した部分の立体を取り出すことはできません。

フィーチャーの種類

 基本的なフィーチャーは下記の4種類です。とりあえず、これらを十分に覚えておけば、ほとんどのモデリングに対応出来ると思います。
  • 突起 - 材料を付加します。
  • カット・スロット・穴 - 材料を除去します。
  • 角R・面取り - コーナー部の材料を付加、又は除去します。
  • サーフェース - 厚みのない平面や曲面を作成します。サーフェース の集合体を キルト と呼びます。
 突起、スロット、カット は断面をスケッチしたあと、押し出し、回転、スイープ、ブレンド によって3次元化する、スケッチ型フィーチャーです。穴、角R、面取り はスケッチせず、寸法を入力して3次元化する、選択配置型フィーチャーです。

 このフィーチャーという概念を理解できれば、Pro/ENGINEER を設計ツールとして使いこなせるでしょう。設計過程での発想の断片と Pro/ENGINEER のフィーチャーをうまく関連させることが出来ればしめたものです。工夫次第では、フィーチャーに設計意図を盛り込んで次工程に渡すことも可能でしょう。設計者が 愛のこもったフィーチャー をアウトプット出来るようになれば、受け取った側にとって、涙が出るほど嬉しい物なんですよ。

「愛のこもったフィーチャー」という言葉は、設計意図が表現できる、誰にでもわかる、ということを説明するために、 H社のM氏が Pro/USER Off Line Meeting in KOBE の中で使用されました。

精度について(相対精度と絶対精度)

モデリングの精度とは、フィーチャー同士の足し算(マージ)や引き算(カット)を行なう時の最小認識距離のことです。

Pro/ENGINEER の精度指定はデフォルト設定で相対精度 0.0012になっていますが、Release.17 以降は絶対精度での指定も可能になりました。
但し、絶対精度での指定を可能にするためには 環境設定ファイル config.pro の中に、

  • ENABLE_ABSOLUTE_ACCURACY Yes (デフォルトでは No になっています)

を記述しておく必要があります。

マニュアル(Part Modeling User's Guide)によると、次の様な場合に絶対精度の使用を検討して下さい、と記述してあるのですが、

  • 他のシステムとデータの精度を合わす場合(エクスポート、インポート、製造用、モールド用)
  • マージを実行する部品とその参照部品の精度を合わす場合
  • 外部参照でジオメトリを他の部品にコピーする場合(マスター部品からのサーフェスコピーなど)

ほとんど全ての場合が上記に該当すると思いますから、絶対精度の指定で意識的に精度をコントロールすることは必須であると言えます。

相対精度と絶対精度の意味については、以下に詳しく説明します。


相対精度

 相対精度の場合、最小認識距離(精度)は部品サイズによって決まります。
最小認識距離=部品サイズ×相対精度/12
 また、フィーチャーの種類によって下記の様な制限があります。
穴フィーチャーの最小直径=最小認識距離×10
押出しフィーチャーの最小深さ=最小認識距離×2

 部品サイズというのは、部品の最大外形(ソリッド、サーフェース、データムカーブやポイント)をすっぽりと覆う直方体(Boundary Box)を考えた時、その最も遠い頂点間の距離となります。

 この直方体はフィーチャーの再生を開始する時点で認識されますから、どの時点からフィーチャーを再生するかによって部品精度(最小認識距離)が異なることになります。途中から再生すると問題ないのに、最初から再生するとサーフェースマージなどが失敗してしまう(逆の場合もあります)というのは、再生する時点によって部品精度が変化してしまうのが原因と思われます。

 例えば、Boundary Box の大きさを8mmVTRのカセット程度(95mm×62mm×15mm)とすれば、部品サイズ(Boundary Box の頂点間の最大距離)は √(95^2+62^2+15^2)= 114.4mm になります。

この時の精度は、
最小認識距離 = 114.4×0.0012/12 = 0.01144mm
穴フィーチャーの最小直径 = 0.01144×10 = 0.1144mm
押出しフィーチャーの最小深さ = 0.01144×2 = 0.02288mm
となりますが、これらの値は部品サイズに比例しますので、注意しなければなりません。

絶対精度

 絶対精度の場合は部品サイズと無関係に、必要な精度を直接指定することができます。
最小認識距離 = 絶対精度

 一般的な家電製品の場合、指定する絶対精度の値としては 0.01 を推奨します。下流工程でのハンドリング(金型設計など)を考慮すると、絶対精度= 0.01mm は最低の値であると理解して下さい。この時の精度は…、

最小認識距離 = 0.01mm
穴フィーチャーの最小直径 = 0.01×10 = 0.1mm
押出しフィーチャーの最小深さ = 0.01×2 = 0.02mm
となります。

ジオメトリチェックの意味

 ジオメトリチェックというのはトポロジーとジオメトリの矛盾を警告しています。精度的に計算不可能な領域であることの警告で、作業は続けられるが基本的にはエラーと同じと考えるたほうがいいと思います。
 ここで、トポロジーとジオメトリの意味を明確にしておきます。
トポロジー(topology)とは、点(vertex)、稜線(edge)、面(face)のつながり方(性質)を意味します。
ジオメトリ(geometry)とは、位置、大きさ、曲率の幾何学的な位置関係(数値)を意味します。

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