Mail Magazine
Ryu-na Design and Engineering
初対面と思っていた人に「メールマガジン読んでますよ」なんて言われると嬉しいものですが、「でも、最近はタマにしか発行されませんね」と付け加えられてしまいます。ということで、久しぶりの発行になります。
加工と設計
設計という行為は仕様を決め、それに基づいて機能を具体化していく行為には違いないのですが、いろんな企業で3次元CADに関わるコンサルをしていると、以下の様な場面にも遭遇します。
コンサルといっても難しい話から始めるのではなく、なぜ3次元CADがうまく活用できてないのかな?ということの原因を皆さんに気付いてもらうところからスタートします。
「ここに来ている皆さんは一応、3次元CADは使える訳ですから、こんなの簡単にモデリング出来ますよね?」と言いながらホワイトボードに簡単なシャフトのポンチ絵を描きます。例えば、位置決め用のフランジや止め輪用の溝を加工したような単純なものですね。
「制限時間は15分です」と言ったとたん、必ず聞かれるのが、「寸法はいくらにすればよいのですか?」というもの。
「うーん、設計者でしょう?自分の身の回りにあるシャフトを設計するつもりで適当に決めて下さい」
まあ簡単なモデリングですから皆さん、それなりに形は出来てきます。但し、それが設計に使い物になるかどうかは別の話です。最近は啓蒙活動浸透してきたのか、さすがに「シャフトの断面形状を一気にスケッチして、それを回転させてモデリング」といった作り方は少なくなりましたが、それでもCAD販売会社のトレーニングを受けた直後の何名かは回転コマンドが頭に残っているのでしょう、必ずやってしまいます。
また、シャフトの加工や旋盤のイメージがある人は「フランジの直径で素材を作ってから、基本径や溝をカットして作りことが多いです。細かな例を挙げればたくさんありますが、よくない例の代表的なものがこの二つと言えるでしょう。
推奨される作り方は「ひとつの機能はひとつのフィーチャに」「設計で重要な順番で作る」という原則に基づいて、「円柱でシャフトの基本径を作ってから、フランジや溝を追加していく」ということなんですが、すなおに考えればそのとおり。しかし、どうも納得いかないということで、このような質問を受けることがあります。
「それは設計の理想としては理解できる」
「しかし、実際の設計では丸棒の定尺というのは無視できないのでは?」
この場合は最初に定尺径となる丸棒をモデリングしておいて、そこから削り込んでいくほうが、理にかなってるのではないかという言う訳です。 設計の現場では確かにそのような作業が多いでしょうね。定尺径を無視すれば加工できないし、非常に高価な物になってしまいますから。
ただ、勘違いしないで頂きたいのはシャフトの基本径と定尺径は同列には論じられない項目だということです。 シャフトの設計を考えた場合、基本径もフランジ径(通常は定尺になる)もシャフトの「仕様」ではあるけれど、内容は異なります。 基本形はシャフトに「必要な」仕様であり、定尺はシャフトの設計が「制約」される仕様であるからです。
簡単なシャフトだから一瞬で思考ループを回しますが、本来は「基本径」→「フランジや溝」と考えていき、「でも、定尺径の制約条件に引っかかるね」ということで、「基本径」→「フランジや溝」という順番で見直していくのだと思います。
「定尺径が使えてもシャフトが折れたらしかたないですもんね」
同じ円柱でも、基本径をモデリングしたものと、定尺径をモデリングしたものを比べれば、基本径をモデリングしたもののほうが役に立つでしょう。 定尺径からモデリングすると、最後まで完成しないと役に立ちませんものね。
みなさんも、ある目的を実現するために「本来必要な仕様」と「制約される仕様」を区別するようにしましょう。
長くなりました。このあたりで…
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